もぼ(2004.11.25)
5日前のことである。もぼ鈴木君から台本が届いた。かねてから依頼していた劇作の第一稿が出来上がったのだ。まだ締め切りは10日も先なのに、多分彼は弱っている僕を慮って筆を早めてくれたのだろう。そういう男なのだ。
もぼ君は前にもちょっとこの日記で触れたが、マキノノゾミ氏に師事していて、最近は外部にも精力的にホンを書き下ろしている、いい意味で少し昔風の男だ。どう昔風かというと、まず風貌が今時ではない。彼のあだ名であるこの『もぼ』というのは、大学時代に付けられたもので、彼の服装や外見がモダンボーイ風だったからだそうだ。僕はてっきり、もぼ〜、としているからだと思っていた。ごめんもぼ。 それに考え方や行動が、僕から見て奥ゆかしい。僕が彼に抱くイメージは明治の書生。もう書生なんて言っちゃいけないほど活躍しているのだが、マキノさんと彼の師弟関係は傍から見ていて羨ましい。
ま、そんなわけで、そんなもぼが脚本を10日も早めて書いてくれたのだ。ひょっとしたら、僕のために早めてくれたというのは独りよがりの勘違いで、ただ単に調子が良くて早く出来上がってしまったのかもしれないけれど、(それにしても早すぎる)とても嬉しかったわけよ。目の前に取り掛からなければならない仕事があるというのが、こんなにありがたいことだとは今まで知らなかったよ。
今日の日記(2004.11.23)
逃げていた。横内さんが今回のことを言葉にしようともがいているのに、僕は何も書けずにいた。いや、むしろ書かずにいた。ここに書く理由が分からないから。だって、辛いに決まっていることを、なんでネット上で他人に向かって語らなければならないのか。 昨日、歯の治療に行ってきた。放っておいた虫歯が、数日前から痛み出したのだ。佐藤さんの葬儀の最中もずきずき痛んだ。俺は辛いのに悲しいのに、そんな気持ちなんかお構いなしに左の奥歯は痛み続けた。
閉会式ミュージカルを客席で見ていて、つくづく俺は良い仕事をしたなあと思っていた。僕の思う良い演出とは、スタッフ・キャストの能力を気持ちよく引き出すこと。つまり、アーティストたちに良い仕事をさせること、それが演出家の良い仕事なのだ。今回はプロ・アマ混合にもかかわらず、それが上手く出来ていた。おそらく今までの僕の仕事の中で最高の出来だったと思う。辛すぎるエンディングが待っていたけれど、このことは消えない。
僕は今回のこと、佐藤さんのことを絶対に忘れない。脳みそではなく魂に刻み付けておく。そしていつか僕の作品の血となり肉となる。僕の仕事は多分それしかない。 でも生きている人間が、死んでしまった人間にしてあげられることなんて本当にあるのだろうか。僕は佐藤さんに何がしてあげられるの。
(2004.11.20)
今日佐藤一憲さんと最後のお別れをしてきました。 情けないことに、語るべき言葉が見つかりません。 為すべきことも分かりません。今はまだ。
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